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2012年8月14日 (火)

橋本旅館のポテンシャル

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橋本旅館の客室の一つを改装するお手伝いをしました。
盆明けに宿泊者を受け入れるために時間的に余裕の無いなか、和室の持ち味を生かした構成でまとめてみました。

さて、これからカフェへの改修も待ち構えている旅館は、さすが昭和初期の建築だけあり戦後の木造建築とは一線を画す出来の良さや雰囲気があります。
歴史あるまちとして生きていく真壁の数少ない宿泊施設として、今後も期待されている旅館です。
但し、今のままで観光客を受け入れ続けていくのは厳しいところが数多くあります。

近年では観光地として脚光を浴びている真壁ですが、それ以前は全くそんなことがないまちでしたから、急に見物客が押し寄せるようになった現在、まちとして観光客を受け入れる”ホスピタリティ”が整っていません。
これは、ただ箱が出来たからいいというものではなく、多分まちじゅうでかなりがんばって行かないと「箱だけあるまち」になりかねない危険を孕んでいます。
まぁ、まち全体がお土産物店になるような、あまりに観光地化してしまうのも食傷気味なんですが、とにかく真壁町の今後は街全体で観光客を受け入れる姿勢にかかっています。
そんなことで年末にオープン予定の橋本珈琲は、ホスピタリティの先駆的矜持を持って出現してほしいと、設計を担当する僕も微力ながら協力しています。

話を戻します。
実は今回、客室の改装に携わってみて改めてそんなことを思いました。
真壁の建物は確かに建築的には出来映えの良いものが多く、それが認められて数多くの建物が文化財になっているし、重要伝統的建造物群指定地域になっています。しかしそれは建築の歴史的価値が評価されているのであって、それだけで賑わいを演出できることにはなりません。

「いやいや真壁のひなまつりがあるじゃないか」と思われるかもしれませんが、あれは”祭り”。
祭りなどのイベントは観光地でなくともソフトが魅力的であれば人が来るものです。
僕が言いたいのは、恒常的にまちのシステムをホスピタリティあふれるものに変化させるということです。

橋本旅館は、建築的にすばらしい昭和初期旅館建築です。しかし内部は、まちの歴史を反映するかのように、「風情ある歴史のまちで、泊まりたい」欲求を満たすものではありません。
現状は、過去行われた度重なる改修によって、素の建築の良さが覆いかぶされています。よい材料が使われていた階段や廊下は、その上から下地板がのりで貼られカーペット敷きにされています。
客室の壁は補修をするのに全面をビニールクロスで覆われています。
木製建具が入っていた窓には代わりにアルミサッシが入り、天井には蛍光灯のペンダントがぶら下がっています。
はっきり言ってダメ。
でもこれは、橋本旅館がダメなのでなく、これが今までの真壁を象徴しているのです。
それが証拠に、変わりつつある今の真壁でもほとんどこういった状況です。
橋本旅館で言えば、戦後からいままで、そういった改装が客を取るために必要であったからそうなったのです。

実は今回の改装にあたって、女将の小貫さんからは、多くを望まれていませんでした。
「震災で被災した客室をどうにか盆開けに使いたい」という要望は、現状をきれいに直し、エアコンを使えるようにするということでした。
しかしそれでは今後の橋本旅館が見えてこない、いかにあるべきか示せないかと考えたのが今回の改修です。

時間をかけられないなか、照明や内装をほんの少しいじっただけでがらっと変えることが出来るのは、元々の建物の素性がいいからです。
歴史あるまちに似合う静謐な空間。
おそらくいまの真壁でこういった雰囲気の場所は無いはずなので、これは実験でもあります。

この部屋は、盆開けに団体客を受け入れるとのことで、それには少し場違いかもしれません。おそらく女将さんも戸惑っているかもしれません。
これは橋本旅館が目指すところが、真壁の雰囲気を楽しみたい客のための宿泊施設に相応しくなるようにと願いを込めた僕からのメッセージでもあります。

ポテンシャルを持つ真壁の本物を引き出してみせること。
これは僕にとっての課題でもあります。

加藤

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