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2012年6月21日 (木)

水塚を治す仕事をプロボラとして行うことについて。

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群馬県板倉町は国の重要文化的景観を受けている地域です。
のどかな田園風景の広がる風景を南北に横切るいくつかの河川が通り、「水辺」が重要文化的景観指定に重要な役割を果たしています。今でこそ豊かでのどかな田園地帯であるこの地域もかつては河川や湖沼の氾濫によって多くの被害を受けています。

「水塚」は、そんな地域にある特異な形式を持つ建物です。
屋敷の一隅に土盛りをし、その上に建物を建て出水時に避難の用に使う。
そんな用途を持つ建物は、かつては全国の河川中下流域に広がる田園地帯に普及していました。
堤防の整備によって今ではその役目を終えた水塚は立地条件からも使いずらく近年では消滅の速度を増しています。

板倉町の文化的景観の要件にはこの水塚が入っています。

この町の歴史や文化にとって欠くことができないし、水防のためのこの形式を持つ建てやがこれほどたくさん残されている地域は全国的に見ても稀少だからです。

今回の震災で被害を受けた水塚があります。が、国からの補助は出ますが、すべてを修復する額など望むべくもなく、多くの所有者にとってお荷物的存在の水塚を修復しようとする例はわずかだと聞きます。

そんな中、水塚の文化的価値を理解されている志ある持ち主や水塚の保存に熱心に動いている町の教育委員会によって、このたび僕が一つの被災した水塚の改修をお願いされることになりまして、数日前から設計図書を作成していました。

調査した結果では、幸いこの水塚は屋根瓦と垂木の修理をすれば何とかなりそうなことが分かりました。                                             とはいっても直すのに決して安くない工事代金です。少しでも持ち主の負担を減らせるよう、水塚の良さを損なわずに改修をして頂けるよう考えています。

板倉町の水塚はおよそ10年前にくまなく歩いて調査をしました。その縁あって今回の依頼です。嬉しいとともに大きな責任も感じています。

当時、水塚調査を始めたきっかけは誰に頼まれたからでもありませんでした。
「地域の特色を持つと思われる建物が数多く残されていて使われていない」
このことが僕を調査に向かわせた動機です。 少し経ち、数件の水塚写真を携えて教育委員会に問い合わせをしたことから様子は変わります。
ちょうど水塚について何か手を打たなければと考えていた教育委員会の後押があって全町に遺る水塚を調べました。結果確認した水塚は150余棟。
あの時の調査は後に板倉町が国の重要文化的景観地域に指定されるのに役立ち、僕自身にも特別な意味を持つことになります。

「プロフェッショナルボランティア(通称「プロボラ」」という言葉があります。
一般のボランティアでなく、自分の持つ専門的能力を生かして協力するボランティア。
わかりやすいところで災害時に派遣される医師などはそういった類でしょう。
僕も災害時に派遣され家屋の被災度を見て応急危険度判定(建築士で応急危険度判定士の資格を取るための受講をした者がなれる)をするために要請があれば駆けつけます。

「プロとしての専門知識を使い社会(地元住民)の役に立つこと」、これは僕が所謂プロボラとして参加するときの第一義です。
誤解なきよう書いておきますが、決して通常のボランティアを卑下しているのではありません。
「災害時に役立つ専門技術を習得していてその技術を持つ者以外それができない。それであれば僕はそこに力を注ぐ」。

で、何が言いたいのかというと、今回僕がこうし被災改修のお仕事をいただけて設計図書を作成していることも「プロボラ」であろうということです。

いままで僕の事を評価下さった町の皆さんへ恩返しができるとすれば、後世のために「水塚」をきちんと直して伝えていくことなんだろうと。

先日調査に訪れた今回改修予定の水塚で持ち主の話を聞きました。彼も自分の町の文化的資産である水塚をどうにか残すため全く使っていないのにもかかわらず少なくないお金を出して修復しようと決意を言葉の端々から感じました。

ここで僕は改修の設計をするお手伝いをさせて頂きました。

もちろん「プロボラ」としての”活動”なので今回いただく報酬(成果品としてA3用紙12枚の設計図書と実測図も含めてすべて)は改修に有意義に使って頂くよう教育委員会に全額寄付を申し出ております。

考えてみれば、歴史的建造物の調査などはかなり「プロボラ」的要素が大きいのです。僕が言うのも何なので、このあたりはハブに「いかに歴史的建造物調査がプロボラか」聞いて頂けると普段全く日の目を見ない縁の下的活動なので泣いて喜んでしゃべることと思います。

加藤

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