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2011年12月13日 (火)

海しかない宿

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はじめてお目にかかったのはオープン間近なのに宿のコンセプトが定まらず悩まれている時期で、それまで庶民的ホテルだった旧金波楼を路線変更する熱意だけがひしひし伝わってきた。
本人が書いてきたコンセプトらしきレポートに羅列される古今東西の参考文献らしきを見て「もっと肩の力を抜きなさいよ」と言いたくなるくらい。


なにしろ一泊すると2人で10万近くする宿なのに料理は素朴、設えも垢抜けない。外観なんて看板も目立たないので分からず素通りされてしまう始末。

それでも主人はそんなことを隠さずすこし照れながら語る。
もし彼が僕の予想通りの人物なら超素朴な宿の非凡な素朴さを誰よりも理解しなにより貴重なことを確信しているはず。

素朴な料理は徹底的にクオリティを確保する。ここでは食材の新鮮さを味わえる。新鮮さは近くで採れるを基本としているから、素朴な新鮮さがわからない人は泊まらない方がよい。おそらくこの宿は客を選択する。素朴な味を尊く思える人だけが与えられる至福。

地元の建築士や家具作家に依頼した建物や家具もそう。
決してスマートでないちょっと気取ったインテリアやお風呂はまさに田舎の家。すこしプチブルジョワジー的やりすぎもご愛嬌なのか。

そんなすべてのことは消えてなくなるくらい強さをもつ海の魅力。
海に建つ鳥居によって背後に控える礒前神社も同時に宿の風景として感じることができる。

これが宿の最大の特徴。

これだけでいい。いかにこれだけを見ていられる宿がないか。
波音だけに身を委ねる宿の希少さ。

ここで、地元の素晴らしさを少々気負いながら、でも全力で伝えようとする主人の熱意は彼も毎日愛おしく眺める海と客に捧げられる。

海しかない宿、「里海邸」。

加藤誠洋

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