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2011年9月28日 (水)

虫食いのうしの絵

Photo 

自宅の食堂に鎮座する「うし」の絵。

描いたのは、粛粲宝(しゅくさんぽう)という画家。

生前の父はこの、黒田清輝・小林古径に師事し花鳥・静物・人物画得意とした日本異色画家と呼ばれる“さんぽう先生”の絵をいくつか所有していて、それらはいまも家にある。

“さんぽう先生”は、晩年東京から自宅兼画室を茨城の縁者を頼って移された。

その縁者と父が知り合いで、東京から引っ越す際にいろいろと手配の手伝いをしたらしい。

僕も一度引越しの手伝いをするため、“さんぽう先生”の東京のたしか練馬に建つ画室にお邪魔したことがある。北側一面に障子の明り取りがはめられた部屋は想像していた画家のアトリエそのまんまで。映画のセットのようだった。

“さんぽう先生”は平成6年、91歳で生涯を閉じた。最後にお会いした先生は仙人のようだった。

この「うし」の絵は、父が所有していた“さんぽう先生”の絵の中でも特にお気に入りだった一枚。

あまりに大切にしすぎて、飾るのも嫌がっていたので、亡くなってから押入れの奥から再発見したときに端が虫に食われていてもったいないことをしたと家族の誰もが思った。

修復をして額装し直そうとしたら「そのままのほうがよい」と、“さんぽう先生”の唯一の愛弟子よりアドバイスを受けたので、そのままの状態で食堂に飾ってある。

がっしりした足でふんばる春の「うし」。力強さがよい。ちなみに周りに配されている文字は漢詩の一節らしい。知識がないのでわからない。わかればもっと深く絵を愛せるんだろう。

虫食いの絵なんてたぶん絵画的価値はなくなっているのだろうが、家族にとっては、頑固な父の思い出とともにあるかけがえのない一枚である。

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