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2009年5月27日 (水)

建物の評価軸

27日

歴史の道調査でご一緒している岡田建築設計事務所の岡田さんと所員の吉沢さん来訪。2次調査に関して意見交換。

要は1次調査で挙げた建物を2次の聞き取り調査のために選り分ける選定基準の確認。

1次調査は栃木県内の奥州道中沿いに建つ建物を悉皆的に見つけていく調査で、対象とする明治中期以前の建物の絶対数の少なさやせっかくだからほかの建物もこの際見てしまおうという貪欲精神で”少し古くていい建物と感じれば何でも”挙げていく調査になった。

2次ではその中から聞き取り・実測を行なう物件を選ぶ作業である。なにせ膨大な数の物件があっても一年間ですべて聞き取りを行なうことは不可能なので、”どこまで”絞り込めば2次の期間に作業を終えることが出来るかという現実的な線がある。

選定は、「町指定以上の建物」「登録文化財程度の建物」「街道沿いにあってランドマーク的役割を担い地元で愛されている」「街道沿いに町並みを形成している建物群」「分間延絵図に記載がある」として、全体の一割程度を目安に選ぶことにした。

ところで歴史的建造物の評価のされかたについてはいろいろな見方があって、エリアで行くと世界・日本・地方・地元などの括りの中で質として相対的、絶対的に判断をするのはもちろんのことあるときは社会的重要性(事件の舞台となったり歴史的に重要人物が関っていたり)で評価をしたりする。建物にとってどの評価が幸せなのかも考えながらまた、地元に愛され続ける建物は最大限そのことを加味しながら評価を決めていく。

コルビジュエの「西洋美術館」が世界遺産から外れることがニュースとなったが、あれこそ世界遺産として他のコルビジュエ作品と比しての評価になるだろうし、そのことで永い間上野にあって人々から大切にされている建物の評価が変わることはないのだ。

中には「中銀カプセルタワー」のように世界的に評価されている建物なのに国内の評価はそこそこで、悲しい現状になっている例もある。

専門家のおこなう学術的な評価が時として「冷たく」映るのは、揺るぎの少ない絶対的評価(絶対的な評価については、これもさまざまな見方があるのだが長くなるので割愛する)をするからで、それがなければこの手の評価はそれこそ「評価に値しない評価」となってしまうだろう。それだけに絶対評価に相対性を加味した評価は地域に根ざした建物とそれを愛する地元にとってなくてはならない要件である。

なぜこんなことを書くかといえば、栃木県庁保存問題について書かれた保存要望書の所見について、そのせいで十分な保存が出来なかったとする不満が一部であるという話を聞いたからで、所見内容を聞いたところでは前述のとおり、絶対的な評価としては(佐藤武夫の他の作品からすると見劣りはするが、しかし、栃木を代表する建物としての価値を認めているそうで、書かれている中で絶対評価部分しか注目せずに批判するのは、それが仮にも建築を学んだ人々から上がったと聞いて余計悲しくなるしこの手の発言をする、容認する動きは政治性でもあるのかとかんぐりたくなるのだ。

それにしても何のためらいもなく同地にあった名作を失くすようなことを行政が率先して進めてしまう事を考えても建築文化に関する病巣は深い。

それにしてもそれにしても中銀、どうにかならんかな~。

加藤誠洋

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